選考基準
優れたソーシャル・アントレプレナーの特徴とは?アショカの選考基準はどのようなものか?
候補者は5つの基準で評価され、アショカ・フェローとして選出されます。
新しいアイディア(New Idea)
社会的な課題に対する[1] 新しいアイディアや解決策、アプローチを持つ人物でなければ、フェローに選定することはありません。新しいアイディアとは、ある分野のパターンを変えることのできる社会問題に対する新たなソリューションやアプローチのことです。私たちはそのアイディアが、歴史的また現代的にみて、イノベーションや実際に変化をもたらす力があるかを見極めることで評価します。
創造性(Creativity)
ソーシャル・アントレプレナーが成功するためには目標を設定できる未来志向の人物である上に実現性の高いビジョンを作り出せる問題解決者として、創造性に富んでいなければなりません。創造性は、突然現れる資質ではありません。創造性を持つ人物は、ほぼ間違いなく若い頃からその片鱗を見せます。創造性を見極めるために、次のような質問を投げかけます;あなたは、これまで以上に人々のニーズを満たしていくための明確なビジョンをお持ちですか?新たなビジョンを生み出した実績はありますか?
起業家としての資質(Entrepreneurial Quality)
これが最も重要な基準です。起業家としての資質は、一流の起業家を決定づける特徴です。この資質を持つリーダーは変化とイノベーションのチャンスを見つけ出し、この変化を引き起こすために全身全霊を傾けることができます。このようなリーダーは自らの使命と無関係なことにはほとんど興味を示しません。また、歴史的な出来事を実現するために10~15年を費やすことも厭いません。このように没頭する姿勢は、新たなアイディアを実現する上で非常に重要です。だからこそアイディアの立ち上げ段階を通じて、候補者はすべての時間を捧げるべきだとアショカは考えるのです。
社会的インパクト(Social Impact of the Idea)
この基準は、候補者自身ではなく、候補者のアイディアに着目したものです。そのアイディアが、ある分野に著しく変化をもたらし、国全体(小さな国の場合は国を超えた地域全体)にインパクトを引き起こすと確信できるものであるかということのみに着目しています。例えば、学校や診療所を新設するといったレベルのサポートはしません。教育制度や医療制度を、国家やより広範な規模で変革することを目指す、より大きな戦略の一つとしての取り組みでなければなりません。
Ethical Fiber(エシカル・ファイバー)
世の中の仕組みを構造から変革しようとするソーシャル・アントレプレナーは、多くの人々の従来のやり方・考え方を変えていかなくてはなりません。アントレプレナーが信頼されなければ、成功の可能性が著しく低下します。アショカでは選考プロセスにおいて、これらの資質を厳しく見極めるようにしています。理性的な分析だけでなく資質の判断においては、評価者の本能や直感に頼らざるを得ない場合が少なくありません。本質的な質問は、「あなたはこの人物を全面的に信頼できますか?」。少しでも疑念の余地があるなら、その候補者は選考を通過できません。
アショカ・フェローシップの選考プロセス
アショカは、信頼を基礎とする世界規模のフェローシップに加わる仲間を見出すため、集中的かつ人間本位のプロセスを用いることにより、有望なソーシャル・アントレプレナーを全世界で探します。
この選考プロセスは、啓発的であり人生観が変わるほどのものです。候補者は、自身のイノベーションに向けた取り組みや、セクター全体のシステムを変革する力を持っていることを示します。候補者は自らの戦略や手法を精査し、個人として、またリーダーとして、自身の取組をいかに推進していくかを省みます。選考プロセスは単に目的を果たすための一手段ではありません。むしろ実りの多い議論を促し、アイディアを磨き上げ、自己発見と成長の旅路に赴く機会を生み出すものなのです。
選定プロセスには以下の段階があります:
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推薦: アショカ・フェローシップの5つの基準に基づき、スタッフ、ボランティア、パートナー、アショカ・フェローおよび推薦人からの推薦を受け付けます。ネットワークを通じての推薦が主ですが、自身はアショカの基準を満たしていると考えるソーシャル・アントレプレナーからの自薦も歓迎します。
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最初の評価:現地のベンチャーチーム(←ベンチャーチームの内容不明)は、候補者の取り組み分野の専門家を交えて候補者と面談し、推薦された取り組みがアショカの基準を満たすソーシャル・イノベーションであるかを審査します。
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第二の評価(セカンドオピニオンインタビュー):次に、ソーシャル・アントレプレナーシップの分野で経験豊富なアショカの上級代表者が、現地のベンチャーチームとともに候補者の取り組みを審査します。第二評価者となる面接官は、候補者とは異なる大陸の出身者でなければなりません。これによりプロセスの客観性を確保するとともに、その取り組みのアイディアが他の国や地域においても普及・浸透し得るかを評価することができます。第二評価者となる面接官は、そのアイディアがセクター全体に既存システムの変革をもたらせるか、また、候補者がアショカの基準を満たしているかについて、徹底的に議論を重ねます。
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委員会(ローカルインタビュー):さらに同じ国/地域出身からの3~4人の有力なソーシャル・アントレプレナーとビジネス・アントレプレナーが候補者と面談します。これらのアントレプレナーは、イノベーションとイノベーションが現地にもたらす潜在的な影響力について、審査します。その後、グループとしての委員会が招集されます。この委員会では[1] 第二評価者がファシリテーターを務め、委員会としてこの候補者を理事会に推薦するかどうか、全会一致で決定します。
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理事会による最終審査:理事会では、これまでの評価を参考にしながら、更に審査を進めます。候補者が基準を満たしているか、アショカの理念に合致しているかを審査し、フェロー選出の最終判断を行います。
「2008年、アショカ・フェローになりました。このような機会に恵まれてとても興奮しました。素晴らしい人たちと出会えただけでなく、夢のような経験をすることができ、創造性に富む新しいアイディアを学ぶこともできました。しかし、そのときは知る由もなく、今もようやく理解し始めたばかりなのは、 ... 一人の人間として、リーダーとして、そしてチェンジメーカーとして、大きく成長したということです。アショカは私を一人の人間として信頼し、私のアイディアが世界にもたらす影響力を見極め、支援してくださいました。この支援と信頼は、社会や人生を大きく変えるほどの力があります。Girls on the Runがこの4年間に大きく成長できたのは、他ならずアショカの支援・信頼があったからです。 ... そして「世界を変える」や「社会の変革」や「前向きなリスクを取る」といった言葉を使うようになってから、さらに自信を持ち、成長に繋げることができました。これも当然の帰結と言えます。このことは、アショカが意図していることでもあります。 ... 今、日々喜びをかみ締めています。」
– Molly Barker、Girls on the Run、米国。2008年にアショカ・フェローに選出
アショカ・フェローシップ
アショカは35年以上にわたって、有力なソーシャル・アントレプレナーで構成される世界最大のネットワーク厳正な選考プロセスをクリアしたフェローには、一生涯にわたりその地位が与えられます。それによりフェローは、更なるインパクトの創出に向けて邁進できるようになります。フェローには積極的にネットワークに関わるよう働きかけ、「誰もがチェンジメーカー」というアショカのビジョンの実現に向けて、互いに協力します。
ソーシャル・アントレプレナーらのニーズは取り組みの段階によって異なることを理解しています。アショカ・フェローは生涯を掛けて、自身の構想を具現化します。アショカのネットワークや支援全てがフェローにとって価値の高いものになるよう尽力します。ネットワークを最大限活用したフェロー同士の交流が、更なるインパクトの創出に繋がることを期待しています。フェローが受けられる支援の例:
- アイディアの実現に全力で邁進できるよう、最長3年間にわたり生活費援助(必要な場合)。
- フェローの取り組みが加速するために役立つ人々や国際会議などのチャンスを常に紹介。
- 知名度の向上
- 選ばれたフェローたちのグローバルなコミュニティへの参加
フェローたちは「アショカのフェローシップによって、取り組みを進めるために必要な肩書とコミュニティ、ネットワークを得ることができる」と語っています。
「ソーシャル・アントレプレナーとしての肩書が得られたことは、本当に意義深いことでした。この肩書によって私の役割は明確化し、同じような能力や使命感を持つ仲間たちから成るネットワークの一員になれたと、安心感を得られるようになりました。」
– Ximena Abogabir、Casa de la Paz、チリ。1995年にアショカ・フェローに選出